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学生実習のTA

大学院生の多くが経験する簡単なアルバイトのようなもの、TA。学部生の学生実習を、研究室単位で1週間、あるいは2週間に渡ってお世話をする。

実習の準備は大変だし、期間中は自分の実験が出来ないからあまりやりたくない、という人も多いと思う。でも学生実習に参加している学部生の中には未来の後輩がいるということを忘れてはいけない。面倒くさいと思っても、せめて見かけ上は張り切って取り組むべきだ。やる気のある学生を確保できれば研究室の活性化に繋がる。

学部生にとっては、自分が将来どこの研究室で卒業研究をし、もしかしたら大学院まで進学して、就職するといったことを考えるのに最適な判断材料が学生実習。大学院生の人は、自分が学部生だった頃はどんな実習がイイ感じだったか、考えてみると良い。

難易度

簡単すぎる内容はレポートが楽ちんかもしれないが、刺激を求める学生には物足りない。つまらないと思われると優秀な後輩の研究室希望者が減る。しかし難しすぎてはいけない。実験が失敗するとレポート書きや考察が苦しくなる。失敗した理由を延々考察する実習レポートほど辛いものは無い。TAは実験の成功率上昇に務める。

TAの雰囲気

気さくに話せるTAは好印象だ、積極的に話しかけよう。でも絡みすぎて鬱陶しいと思われてはいけない。初対面の人と話せない人はネタを用意しておこう。基本は所属サークル、出身地、趣味、アルバイトなど。研究室に関する質問が来たらチャンスだ、先生や先輩の暴露話で笑いをとっておこう。

時間

学部生は忙しい。予告もなく実習が長引けばモチベーションは最低だ、手際よく作業しよう。そして生物系の実験には待ち時間がつきもの。並行してやる実験や議論の時間を設けてうまく空白を埋めよう。今日は何時に終わりますかと質問してくる学生や、開始からカバンを手放さない学生には要注意だ。電気泳動の間に消える可能性が高い。

打ち上げ

最終日の夜には飲み会に誘ってみよう。大人数になったら大変だが、ラボで飲んでみると良い。大量のお酒はあらかじめ低温室で冷やしておく。飲み会中、多少酔っていてもできる実験予定を組んでおこう。タイマーが鳴ったら席を立ち実験室に戻ることで、デキる先輩をアピールする。研究に憧れを持っている学生に効果抜群だ。

まとめ

TAは研究室の代表選手。シリアスとネタをバランスよく配合して、学生の確保に貢献しよう。

新入生におすすめしないこと

研究室に配属されて間もない学生にありがちな、いきなり気合入りすぎちゃって深夜まで残ったり、お休みの日にも実験室に来たりという症状。やる気があること自体は良くて、僕も見習いたいぐらいなんですけども、ちょっと問題も。

それは、指導教官や先輩がいない時間の実験が多くなって、人によってはそれがメインになってしまうこと。自立してていいじゃぁないか、という感じもしますけど。

でも、トラブル時が危険。対処が分からない、勝手にやってみる、結局惨事に。それから、実験で困ったときにすぐ質問できる人がそばにいたほうが、失敗は少ないでしょう。最初のうちは。

というわけで、実験無双するのは夏以降にしましょう、と普段から言ってます。読むべき教科書だってありますよね。”実験作業” をいきなり闇雲にしてもなぁと思います。

胆のうに関する誤解と研究者の視点

助教の先生がしばらく前に入院されていた。研究室に復帰はしたものの、お酒や激しい運動、脂肪が多い食事を控えられていた。事情を訪ねてみると、胆石を取り除く手術を行ったそうだ。

そこで胆のうの話になったんだけど、僕はずっと(小学生以来)胆のうについて誤解していたことが分かった。

胆のうは、脂肪を分解する消化液(胆汁)を作って分泌する器官、だと思っていた。これが全然違う。

まず胆汁そのものには消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を乳化してその消化吸収を促進する。また、胆汁は肝臓で作られ、胆のうで濃縮、貯蔵される。

先生は胆のうをまるごと切除する手術を行った。そう聞いたときは驚いたけど、上記の理由から、胆のうは必須な消化器官というわけでは無いようだ。担当医の説明では、肝臓が腸への胆汁の分泌料を調節するように体が慣れてくる、とのことらしい。

こういう話を聞くと、医学系、薬学系の人が培養細胞の実験をin vitroと言うのが分かる気がする。培養細胞とsiRNAを使ってノックダウン実験をやる、表現型が出た、じゃあ個体でも?違うんだろうなぁ。時間をかけて作ったノックアウトマウスだって、表現型が出ないとかよくあることだし。だからといってその遺伝子に機能は無いとは言わないけど。この場合は変異が個体レベルでは相補されてしまって、表現型が隠れてしまってるのかもしれない。

背景の違う研究者によって観てるレベルが違う。当たり前と言えばそうだけど、胆石の話から思ったことでした。